相続の手続きで何よりも重要――それが「分割協議書」です。不動産や預貯金、株式などを複数人で分ける場面では、作成を怠ったことで名義変更や相続税申告が認められず、大きな損失や家族トラブルが発生するケースが相次いでいます。実際に、全国で相続をきっかけに訴訟に発展した例の多くが、分割協議書の不備や作成漏れに起因しています。
「どんな書き方が正しいのか分からない」「必要な書類や手続きが複雑で不安」――そんな悩みを持つ方が少なくありません。特に法務局や金融機関の手続きでは、1枚の書類の不備が数週間の遅延や無効化につながるため、正確な知識が不可欠です。
本記事では、分割協議書の法的な役割から最新の書き方、実際に使える雛形・トラブル事例まで徹底的に解説。ここまで知っておけば、「相続で損をした」「後から揉めてしまった」と悩まされるリスクを最小限に抑えられます。
今こそ正しい情報を手に入れ、安心して手続きを進めましょう。この先を読むことで、あなたに最もふさわしい「分割協議書」のポイントが明確になります。
分割協議書とは何か|法的基礎・目的・必要性から徹底解説
分割協議書の法的根拠と役割
分割協議書は、相続人全員で遺産の分け方について合意した内容を文書で示す重要な書類です。法律上は民法に基づき、その効力が認められています。遺産分割協議が成立した証拠として、不動産登記や預貯金の名義変更、相続税申告など、多くの手続きで提出が求められます。
この書類がないと、相続人全員の合意が証明できず、相続登記や財産の名義変更手続きが進まないケースが多いです。特に金融機関や法務局、税務署などに対しては、分割協議書を正式な書面として提出することで、手続きが円滑かつ確実に進行します。
下記の表は、分割協議書の主な役割と、その提出先の例をまとめたものです。
役割 | 提出先の一例 |
---|---|
相続人間の合意形成証明 | 金融機関 |
不動産の名義変更 | 法務局 |
相続税の申告 | 税務署 |
各財産の名義変更 | 保険会社・証券会社他 |
分割協議書が必要になるケース・具体的な場面
分割協議書が必要になる主なシーンは、不動産や預貯金、株式など各種財産を複数の相続人で柔軟に分ける場合です。以下のケースが代表的です。
-
不動産の分割や名義変更
-
預貯金の分割・引き出し
-
複数の財産を相続人同士で異なる割合に分ける場合
-
代償分割(特定の相続人が財産を受け取り、他の相続人に金銭等を支払う)
この文書作成が法的に必須となる条件は、ひとつでも相続財産が分割対象である、もしくは相続人の中で均等分割以外の配分を希望する場合です。不動産や預金に関しては、登記や払い戻し手続きで金融機関や法務局から正式な分割協議書の提出を求められます。
必要書類には、分割協議書のほかに相続人全員の印鑑証明書や戸籍謄本、被相続人の除籍謄本、財産の登記事項証明書なども含まれます。具体的な必要書類例は以下の通りです。
主な必要書類 | 用途 |
---|---|
分割協議書 | 各種名義変更、税務提出 |
相続人の印鑑証明書 | 本人確認、意思確認 |
被相続人の戸籍謄本及び除籍謄本 | 相続関係の証明 |
財産ごとの証明書(登記事項証明書他) | 対象財産の確認 |
分割協議書が不要な場合・例外パターンとその理由
分割協議書が不要となる主な例として、法定相続分通りに各財産を分ける場合や、被相続人が遺言書を残しており、その内容が法的要件を満たしている場合が挙げられます。
-
遺言により明確な分割方法が指定されているとき
-
相続人全員が法定相続分の通りに同意している場合
-
相続人が一人だけの場合
これらの場合は、分割協議の余地がなく、協議書の作成義務も生じません。ただし、金融機関や法務局など一部の手続きでは、法定相続分であっても個別の同意書や書式の提出が求められることがあります。
例外パターンに該当するかどうか迷う場合は、金融機関や法務局、専門家に事前確認を行うことで、手続き上のトラブルを未然に防ぐことができます。
分割協議書作成に必要な書類と事前準備のすべて|2025年最新対応
分割協議書作成 必要書類一覧と収集方法
分割協議書を作成する際には、相続人全員の同意を証明するため、多様な書類が必要です。以下の表は、一般的に必要とされる主な書類を整理したものです。
書類名 | 主な取得先 | ポイント |
---|---|---|
戸籍謄本 | 市区町村役場 | 相続人を全員特定するために必須 |
印鑑証明書 | 市区町村役場 | 各相続人分が必要 |
被相続人の住民票除票 | 市区町村役場 | 亡くなった事実の証明 |
固定資産評価証明書 | 市区町村役場 | 不動産の評価額証明 |
財産目録 | 自作または専門家依頼 | 財産全体の把握が必要 |
主な収集の流れ
- 被相続人の死亡確認後、住民票除票と戸籍謄本を取得
- 相続人全員分の印鑑証明書を準備
- 不動産がある場合は固定資産評価証明書を収集
- 全財産をまとめた財産目録を作成
必要書類は相続内容や財産の種類によって追加される場合があるため、念入りな確認が欠かせません。
相続人特定・法定相続情報一覧図との違い
相続人の特定は分割協議書作成において最重要事項です。戸籍謄本から親等をたどり、誰が相続人となるか明確にする必要があります。
相続人確定までの手順
-
亡くなった方の出生から死亡までの全戸籍謄本を取得
-
配偶者や子など法定相続人を全員洗い出し
-
相続放棄や廃除された場合も必ず記載
法定相続情報一覧図との比較
項目 | 分割協議書 | 法定相続情報一覧図 |
---|---|---|
目的 | 遺産分割内容の合意書 | 相続人関係の証明書 |
記載内容 | 財産の分け方・合意内容・署名押印 | 続柄・氏名等相続人関係情報 |
法的効力 | 各手続きに提出し合意を証明 | 手続きで戸籍提出の代わり使用 |
法定相続情報一覧図は公的証明書扱いですが、分割協議書は合意の証明として必要となり、役割が異なります。
財産目録作成・合意内容の整理方法
財産目録は分割協議書とセットで作成するケースが多く、遺産の全体像を明確に可視化できます。作成ポイントは次の通りです。
財産目録記載のコツ
-
不動産は所在地、地番、面積、固定資産評価額を明記
-
預貯金は金融機関名・支店名・口座番号・残高を記載
-
株式や車も可能な限り詳細を記載
合意内容整理のポイント
-
各相続人が取得する財産を明確に区分
-
合意が難しい場合は専門家へ相談
-
分割方法に特殊性がある場合は根拠を記載
主なチェックリスト
-
財産の漏れなく記載されているか
-
分割方法について全員が合意しているか
-
署名・押印が揃っているか
財産目録と分割協議書双方を正確に整えることで、トラブル回避や円滑な手続きが実現できます。相続人間で認識の違いが生じやすいので、慎重な作成が何より重要です。
分割協議書の書き方・雛形・文例徹底ガイド【2025年最新版】
分割協議書のフォーマット・雛形と活用方法
分割協議書の作成には、正確なフォーマットを選ぶことが大切です。主な形式はエクセル・word・PDFがあり、各フォーマットには特徴があります。エクセルやwordは編集が簡単で雛形のカスタマイズにも適しており、多くの自治体や法務局、国税庁が公式サイトで雛形やテンプレートを無料で提供しています。PDF書式は改変が難しい分、書類の保存や提出用として安心です。
代表的な分割協議書フォーマット比較
フォーマット | 特長 | 向いている用途 |
---|---|---|
エクセル | レイアウト変更が柔軟 | 雛形のカスタマイズ |
word | 文言・構成編集が自在 | 作成・印刷用 |
改ざん防止・保存性高 | 提出・保管用 |
注意点としては、法務局や金融機関によっては指定様式がある場合もあるため、提出先の要件確認が重要です。また押印・署名箇所を削除・変更しないようにしてください。
分割協議書 書き方の流れと各項目のポイント
分割協議書の作成は、以下の流れと注意ポイントを押さえることでスムーズに進められます。
- タイトル・作成日
- 被相続人の基本情報…正確な氏名・生年月日・死亡日を記載。
- 相続人全員の氏名・続柄・住所…代表相続人の記載ミスに注意。続柄や本籍も記入が推奨されます。
- 協議内容(具体的な分割方法)…預貯金や不動産など資産ごとに「どの財産を誰が取得するのか」明記します。
- 押印・署名…実印での押印が原則。相続人全員分の印鑑証明書が求められることが多いです。
- その他特記事項…未成年者や行方不明者がいる場合には、家庭裁判所の許可や特別代理人の選任などが必要になります。
協議内容や項目の記載漏れは無効になるリスクがあり、記載例やひな形を参考にしながら慎重に作成しましょう。
項目別|分割協議書の文例集・書き方応用
実務でよく使われる資産別・状況別の分割協議書文例を紹介します。
-
預貯金の分割例
- 「○○銀行○○支店普通預金口座番号1234567は、長男○○○○が取得する。」
-
不動産の分割例
- 「相続財産目録記載の土地及び建物は、長女○○○○が単独で相続する。」
-
株式・有価証券の場合
- 「○○証券株式会社の特定口座内株式は、次男○○○○と三男○○○○が2分の1ずつ相続する。」
-
代償分割の例
- 「長女○○○○がすべての不動産を相続し、代わりに他の相続人へ金○万円を支払う。」
これらは法務局や金融機関の求めに応じて応用でき、複数の財産がある場合も資産ごとに明記することが重要です。署名・押印部分の訂正や削除は避け、必ず正しい様式を使用して作成してください。
分割協議書の提出先・必要な手続き・提出方法の完全対応
相続税申告・税務署に提出する場合
相続税申告において分割協議書は、遺産分割内容の証明として税務署に提出が必要です。特に相続税の配偶者控除や小規模宅地等の特例を受けたい場合、協議書がなければ適用されません。提出時には、相続人全員の署名・実印押印があり、印鑑証明書の添付も不可欠です。
提出先は被相続人の住所地を管轄する税務署になります。申告書と一緒に「遺産分割協議書」と全員の印鑑証明書、各相続人の本人確認書類が必要です。相続税申告期限は相続開始日から10か月以内に定められているため、遅延には注意しましょう。
下記のテーブルで、主な必要書類をまとめます。
必要書類 | 概要 |
---|---|
遺産分割協議書 | 相続人全員の署名・実印が必要 |
印鑑証明書(相続人全員分) | 発行から3か月以内が望ましい |
各種添付書類 | 財産に応じて、登記簿謄本や預金通帳コピー等 |
不動産・預貯金・自動車などの各提出先と特徴
遺産分割協議書は、財産ごとに提出先が異なります。
不動産の場合
-
管轄法務局へ提出。不動産の名義変更(相続登記)時に必須です。
-
法務局のHPから雛形(ひな形)や書式をダウンロード可能。
預貯金の場合
-
各銀行や信用金庫で手続き。金融機関ごとに書式や提出書類が異なるため、事前確認が重要です。
-
全ての相続人の署名・押印が必須で、印鑑証明の添付も求められます。
自動車・有価証券の場合
- 自動車は運輸支局やディーラーで相続手続き。証券会社はそれぞれの窓口や郵送でのやり取りとなります。
特徴を以下にまとめます。
財産の種類 | 主な提出先 | 必要な主な書類 | 特徴 |
---|---|---|---|
不動産 | 法務局 | 協議書、印鑑証明、不動産資料 | 登記名義変更のため雛形活用が便利 |
預貯金 | 銀行・金融機関 | 協議書、印鑑証明、通帳、本人確認 | 行ごとに様式や要件が異なる |
自動車 | 運輸支局 | 協議書、印鑑証明、自動車書類 | 手続きは所有権移転や車庫証明も含まれる |
有価証券 | 証券会社 | 協議書、印鑑証明、証券類の資料 | 証券会社ごとに提出方法が異なる |
提出時の注意点とトラブル回避策
分割協議書の提出時は、いくつかの重要なポイントとトラブル回避策を抑えましょう。
1. 提出期限の厳守
- 相続税や登記、金融機関での手続きは期限が設けられています。特に相続税の申告は10か月以内と定められており、遅延はペナルティ対象です。
2. 書式・様式の確認
- 法務局や各金融機関の場合、独自のひな形や書式を求められることがあります。公式サイトで無料ダウンロードできる場合もあるため、事前に確認しましょう。
3. 書類のコピー・紛失時の対応
-
オリジナルは一部機関へ提出後返却されません。複数の提出先がある場合は、署名・押印済み原本を複数作成するか、コピーを取っておくことが重要です。
-
紛失時は再度作成が必要になるため、データと紙両方で管理しておくと安心です。
4. 署名・押印漏れ、印鑑証明の有効期限
- 相続人全員の署名・実印が揃っていない場合、手続きが進みません。印鑑証明は通常3か月以内が推奨されるため早めに準備しましょう。
5. よくあるトラブルの例
-
書式記載ミスや提出先の誤り、必要書類の不足で手続きがやり直しになることが多いです。
-
協議書の内容に相続人間で認識違いがある場合も紛争の要因となるため、内容確認を徹底しましょう。
上記ポイントに沿って、適切なフォームを用意し、各提出先の条件をよく確認のうえ手続きを進めることが重要です。
分割協議書作成時の注意点とトラブル事例から学ぶ実践ノウハウ
分割協議書が無効になる典型パターン
分割協議書は遺産をどのように分けるかを記す重要書類ですが、条件を満たさないと無効扱いとなります。代表的な無効事例は以下のとおりです。
主な無効パターン
-
相続人が全員記載・押印していない
-
実印以外で押印している
-
印鑑証明書が添付されていない
-
相続人の氏名・住所など記載情報が不正確
-
配偶者や子など法定相続人の漏れがある
-
内容が曖昧で、誰が何を取得するか不明確
-
後日加筆や訂正の痕跡がある
分割協議証明書の無効は、預金や不動産の名義変更手続きができないばかりか、相続税の申告でも受理されません。作成時は、全員の合意と正確な記載を徹底することが必須です。
作成時におきやすいトラブルとその克服法
分割協議書作成では、相続人が多い場合や遠方在住の場合に連絡が取れない、あるいは財産分けを巡る意見対立といったトラブルが頻発します。こうした問題の対応策は以下のとおりです。
-
相続人が連絡不通の場合、戸籍調査などで住所を特定し、特別代理人の申立ても検討する。
-
一部の相続人が反対の場合、公正証書化するなどで第三者の証明を取る。
-
口頭合意のみで書面ができていない場合、必ず全員で協議し署名・押印する。
-
司法書士や専門家への相談を検討し、法律的観点からアドバイスを受ける。
下記はよくあるトラブルと対応策の整理です。
トラブル内容 | 対応策 |
---|---|
相続人の一部が協議に参加しない | 住所調査・特別代理人選任・専門家の介入 |
合意内容への異議が出て協議がまとまらない | 第三者立会・公正証書化・交渉記録の保存 |
記載ミス・記入漏れ | 必要事項の再確認・チェックリスト活用 |
印鑑証明書の取得が遅れる | 早めの準備・各自の取得手順確認 |
十分な準備と円滑なコミュニケーションがトラブル回避の鍵となります。
トラブル回避のための確認リスト
分割協議書に関するミスや手続上の不備は後々大きな問題となります。トラブル防止のために以下のポイントを最終確認しましょう。
分割協議書作成時の確認リスト
- 相続人全員の氏名・住所・署名・実印を記載したか
- 印鑑証明書を相続人全員分添付したか
- 分割内容(預貯金・不動産など)の記載に漏れがないか
- 日付や財産内容、取得者の記載に間違いがないか
- 加筆・訂正の痕跡がないかを確認したか
- 必要に応じて公正証書化を検討したか
- 提出先(法務局・金融機関・税務署など)ごとの必要事項も確認したか
重要ポイント一覧
項目 | 確認内容 |
---|---|
相続人全員の署名 | 実印・全員分 |
印鑑証明書 | 取得日と氏名が一致しているか |
分割方法の明確記載 | 誰が何を取得するか明確になっているか |
添付書類 | 戸籍謄本・住民票など |
公正証書化の有無 | 証拠力強化のため |
これらチェックリストを活用し、ミスや抜け漏れを防いで確実な手続きを進めることが、後々のトラブル防止につながります。
自分で作成できる?分割協議書と専門家(司法書士・弁護士)の選び方
分割協議書を自分で作成するメリット・デメリット
分割協議書は自分で作成することも可能ですが、いくつか注意すべき点があります。
メリット
-
費用が抑えられる:専門家に依頼しないため手数料が不要です。
-
自分のペースで作成できる:家族間でじっくり協議のうえ進めることができます。
-
プライバシーを守りやすい:自分たちだけで話し合い、内容を整理できます。
デメリット
-
記載ミスに注意が必要:書式や内容に不備があれば不動産の名義変更や預貯金の解約に支障が出ます。
-
必要書類や手続きの知識が必要:分割協議書、印鑑証明書など揃えるべき書類や手順を正確に理解する必要があります。
-
相続人間で紛争が起きるリスク:第三者が介在しないため、争いが発生した場合の対応が困難になることがあります。
専門家によるサポートが不要な場合や、シンプルな相続内容の場合は自作も視野に入れられますが、慎重さと丁寧な知識の習得が不可欠です。
司法書士や弁護士に依頼する場合の流れと費用
司法書士や弁護士に分割協議書の作成を依頼すると、下記のような流れになります。
- 事前相談・内容ヒアリング
- 必要書類の準備(戸籍謄本、遺産目録、印鑑証明など)
- 協議書の案文作成・チェック
- 相続人全員の署名・押印取得
- 提出や手続きのサポート
費用はケースや専門家によって異なりますが、「5万円〜10万円前後」が相場となります。
依頼時の重要な基準は以下の通りです。
-
実績や経験の確認
-
料金体系の明確さ
-
相続トラブルや複雑なケースでの対応体制
-
信頼できる説明力や相談対応力
複数社から見積もりをもらい比較するのがおすすめです。
自作・司法書士・弁護士による特徴比較
下記のテーブルで比較してみましょう。
自分で作成 | 司法書士に依頼 | 弁護士に依頼 | |
---|---|---|---|
費用 | 0円〜印紙代など最小 | 5万~10万円程度 | 10万~30万円程度 |
作成の容易さ | 知識や注意が必要 | サポートで簡単 | トラブル時にも安心 |
サポート内容 | 相談不可 | 書類作成・手続き補助 | 紛争解決・調停など全面対応 |
向いている人 | シンプルな相続内容 | 登記や手続きが必要な場合 | 争いが予想される場合 |
責任範囲 | すべて自己責任 | 手続き部分をカバー | 法的責任の範囲で対応 |
シンプルなケースでは自作も十分可能ですが、相続人間の意見が分かれる場合や多額・多様な財産を扱う場合は、専門家の力を借りるほうが安全です。どちらの方法がベストか、費用・手間・リスクを把握したうえで冷静に判断しましょう。
分割協議証明書・関連書式との違いと使い分けガイド
分割協議証明書とは?分割協議書との法的・実務的な相違点
分割協議証明書と分割協議書は、遺産分割の場面で頻繁に使用されますが、その性質や実務上の取り扱いには明確な違いがあります。分割協議書は全ての相続人が一枚の書面に署名・押印し、遺産分割の内容について合意したことを証明するための書類です。一方、分割協議証明書は各相続人ごとに作成し、個別に同意した内容を証明する形式が取られます。
以下の比較表で、それぞれの特徴を整理します。
書類名 | 署名方法 | 使用ケース | 実務上の特徴 |
---|---|---|---|
分割協議書 | 相続人全員が同一書面に署名・押印 | 全員合意の文書保存や提出時 | 一度の作成で全員分をまとめられる |
分割協議証明書 | 相続人ごとに個別作成 | 押印・署名が同時に集められない場合 | 郵送などで署名収集が容易 |
分割協議証明書は、遠方の相続人がいる場合や署名・押印を一括取得しづらいケースなどで非常に役立ちます。どちらも法的に有効ですが、法務局や金融機関により必要書類が異なる場合があるため、提出先で求められる書式や記載事項を事前に確認しておくことが重要です。
その他の関連書類・補助書式の一覧
遺産分割にまつわる手続きでは、分割協議書や分割協議証明書のほかにも、さまざまな関連書類や補助書式が必要となることがあります。代表的なものを以下のテーブルでまとめました。
書類・補助書式 | 概要・主な用途 |
---|---|
同意書 | 特定の相続人や第三者が遺産分割や名義変更に同意する内容を証明 |
委任状 | 相続手続きの代理人を立てる場合に作成、司法書士・弁護士が代理申請 |
代償分割申告書 | 生命保険金や特定財産を譲渡する場合、税務申告の際にセットで提出 |
印鑑証明書 | 相続人が押印した印鑑の真正を証明、協議書提出時に添付必須 |
法定相続情報一覧図 | 家系図のような形で相続人・被相続人の関係を証明する法務局発行書類 |
実務ではこれらの書類を適切に用意しなければ、金融機関での口座解約や不動産の相続登記が進められない場合があります。特に印鑑証明書や委任状は提出期限や有効期間に注意し、不備が無いよう事前にチェックしておきましょう。
実際にどの書類が求められるかは、手続きの内容や相続財産の種類ごとに異なります。金融機関や法務局、税務署など、提出先が指定する書式を確認しながら、漏れなく準備することがスムーズな相続手続きのカギとなります。
分割協議書のよくある質問と失敗しないための最新情報Q&A【2025年最新版】
分割協議書なしでも不動産や預金は相続できる?
分割協議書がなくても、不動産や預金の相続ができる場合もありますが、法定相続分通りに分ける場合や相続人が一人だけの場合などに限定されます。不動産の名義変更や預金の払い戻し時、金融機関や法務局では原則として遺産分割協議書の提出を求められることが多いです。一方、法定相続分で分ける場合は、金融機関によっては協議書が不要な場合もありますが、その際は相続人全員の同意書や印鑑証明書が必要となることが一般的です。遺産額が大きい場合や将来の紛争予防の観点からも、きちんと分割協議書を作成することが推奨されています。
分割協議書の写しやコピーは有効か?
分割協議書の原本とコピーの有効性は、提出先や用途によって異なります。法務局や金融機関では、原則として原本の提出または原本と相違ない写し(コピー)+原本証明が必要となる場合が多いです。特に相続登記や預金の解約手続きでは、協議書に各相続人の自署押印と印鑑証明書が必要となります。コピーのみでは受け付けてもらえないケースがほとんどです。安全性を考慮し、原本は大切に保管し、提出時は写しに「原本に相違ありません」と記載し押印して使用するのが一般的です。
遺産分割協議書のダウンロード・無料書式最新情報
近年は国税庁や法務局などの公的機関が最新のひな形や無料テンプレートを公式ウェブサイトで提供しています。形式はWord、PDF、Excelなど複数用意されており、書式をダウンロードして自分で作成可能です。特に金融機関ごとに独自のフォーマットが指定されている場合は注意が必要です。一例として、預貯金や不動産の相続に対応したサンプル文例も無料で活用できるため、テンプレートを利用しつつ、自身の相続内容に合わせて記載事項を確認することが重要です。
提供元 | 主なフォーマット | 備考 |
---|---|---|
国税庁 | Word、PDF | 最新版雛形あり |
法務局 | Word、Excel | 不動産向け専用テンプレート |
金融機関 | 独自様式 | 各銀行HPで要確認 |
法定相続情報一覧図・相続関係説明図との違い
分割協議書・法定相続情報一覧図・相続関係説明図は用途も効力も異なります。
-
分割協議書は「遺産分割の合意内容」を証明する法的書類
-
法定相続情報一覧図は「法定相続人が誰か」を証明(主に法務局発行)
-
相続関係説明図は「家系図」的な位置付けの参考資料
下表のように、それぞれの主な違いを整理します。
書類名 | 目的・効力 | 実務での主な提出先 |
---|---|---|
分割協議書 | 分割合意の証明 | 金融機関・法務局 |
法定相続情報一覧図 | 相続人の証明 | 法務局・銀行など |
相続関係説明図 | 家系図の参考 | 補助資料として提出先は限定 |
分割協議書を紛失した場合の対処法
分割協議書を紛失した場合は、全相続人の協力を得て再作成が必要です。手続きとしては、再度相続人全員が内容に合意し、各自署名・実印押印・印鑑証明書を用意します。すでに法務局等で相続登記を完了している場合、原本の写し(法務局が保管している場合)を発行してもらえるケースもありますが、基本は自分たちで再作成が必要となります。二度手間とならないよう、原本・写しの複数保存がおすすめです。
相続人が複数いない・ひとりだけの場合の対応
相続人が一人だけの場合や他の相続人全員が放棄しているケースでは、分割協議書の作成を省略できる場合があります。法務局や銀行など多くの実務機関で、戸籍謄本・除籍謄本・遺産分割協議書に代わる単独相続申述書などを受理しているため、簡略な手続きを選択できます。ただし、書類の提出先によって必要となる場合もあるので、事前に窓口で確認が重要です。手続きに必要な主な書類は下記の通りです。
-
被相続人の戸籍謄本・除籍謄本
-
相続人の戸籍謄本
-
相続人の印鑑証明書
-
相続関係説明図や単独相続申述書等
相続人が一人の場合でも、今後のトラブル防止や証拠保全の観点から分割協議書を作成するケースも多く見られます。